ツキデ工務店は、現在、伝統的な技法で数寄屋門とそれに付随する塀の工事を行っています。

近頃は、このような門や塀を建てる機会も少なくなり、まして伝統的な技法で仕事をする機会も稀となっています。

そこで技術を伝えていくために、図面では表現されていない、技や納まりを写真に撮り記録として残すことにしました。

今回、その一部を紹介したいと思います。

塀の形状は、御影石の延石（のべいし）上に1間（けん）間隔に立てた桧の化粧柱の上に瓦屋根をのせ、壁は腰板に一部ぬり壁仕上げで、裏側に控えの壁を建てるという形状です。

まず足元は、ベースコンクリートの上に延石をのせ、その上に柱の「足固め」となる土台をボルトで締めます。

そして次に、「足固め」の土台をまたぐように柱を建てます。

柱材は、天然乾燥の「吉野桧」で、化粧で見える面が割れないように柱心まで「背割れ」を入れています。その「背割れ」は、木が乾燥すると開いてくるので「契り（ちぎり）」を入れて開くのを抑えます。

柱と土台の「仕口」は、「寄せアリ」風にし、ホゾ穴に「栓」を打つことにより抜けなくしています。

次に柱間にパネル状に組んだ桧の「腰板」をはめ込みます。

一般的には、「腰板」を一枚づつ真鍮（しんちゅう）釘を打って止めることが多いのですが、今回は釘を使わず、「蟻（あり）桟」を用いたパネルにしました。

パネルの上に桧の「水切り」を入れ、端から順番に組んでいきます。作業場で事前に仮組しているのでスムーズに作業が進みます。

柱の上のホゾには「棟木」がのります。その下のホゾ穴には、両側に「桁」がのる「腕木」がささり、またその下のホゾは、控え壁の棟木がささる「雇（やとい）ホゾです」。

塀のある個所に片引きの「くぐり戸」を一カ所設けるのですが、その箇所の「半柱」と「鴨居」の仕口にボルトなどの金物を使わず、「引きどっこ」という伝統的な細工で引きつけ固定しています。

腰板パネルを何枚か組み、次に柱が開かないように「貫（ぬき）」という水平材で柱を貫いて固定します。その際、柱の「貫穴」の内部に「渡りあご」という加工を施します。

そして「貫」には「渡り欠き」という加工をし、柱を貫いて「渡りあご」に落とし込み、「楔（くさび）」を打って固定します。

この貫工法が、日本の木造伝統工法の粘り強さを生む技です。

こうすることにより塀の棟・桁行方向の揺れは無くなり固まります。

次に「棟木」をのせます。

今回の仕事の棟梁は、30代の大工が務めてくれています。

そして今年の3月に専門学校を卒業し、4月から社員大工としてツキデ工務店に入社する二十歳の大工見習の二人が勉強を兼ね手伝ってくれました。

若い二人にとってさぞかしいい刺激になった事と思います。