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能登半島地震に思う

家族や友人と新年を祝い過ごしていたお正月、「なんで元旦に」と言いたくなる今回の大地震。被災された方々、並びに関係される皆様に心よりお見舞い申し上げます。

私にとって能登半島は、50年ほど前の学生時代の思い出の地。
当時、バイト代をためて買った初めての一眼レフカメラ「ペンタックスSP F1.4」を肩にかけ、能登半島への超貧乏旅行。
初めて見る能登の風景を白黒フイルムで撮り、旅先での出会いやな経験など様々な思い出に残る旅だった。
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そしてこの歳になり、当時の懐かしさにかられ、2020年9月と11月に2度能登半島を訪れた。
連日、テレビや新聞で報道される被災地の悲惨な状況を見る時、4年前に訪れた能登の風景、とりわけ能登地方ならではの民家や街並みが思い出される。
今回、そんな思いで4年前撮った能登ならではの風景を改めて振り返ってみた。

輪島市の西南に位置し、海岸線沿いの高台に細長く形成された「黒島」の集落。
江戸時代は幕府直轄領(天領)で本来、漁村として発展した村だったが、経済力を蓄えると海運業を営む船主が多数登場し、江戸時代中期から明治時代中期にかけて大いに活躍し栄えた集落。2009年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。
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その船主の一人である「角海(かどみ)家」は、幕末の全盛期には7隻の北前船を所有する黒島でも屈指の廻船問屋。広大な敷地内の主屋など5棟は国の重要文化財に指定されている。
この写真は、ツキデ工務店の「2021年の年賀状」に使わせて頂いた。
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真っ黒な釉薬(ゆうやく)瓦葺の屋根、壁が石川県の県木でもある「アテ(能登ヒバ)」の「下見板張り」、素朴で統一感のある街並みに魅了された。
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黒島の近く輪島市の西部の海岸沿いにある、能登ならではの景観である「間垣の里」。
「間垣」というのは、高さ5m程のマダケを隙間なく並べた垣根のことで、冬の日本海から吹き付ける季節風から家屋を守るためのもの。
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輪島の「朝市」。
輪島の「市」は、おそくとも室町時代には存在していたそうで、ある時期までは、農民や漁民がそれぞれ物を持ち寄ってのぶつぶつ交換の場として、また住民の台所としての性格がつよかった市だったが、近年その性格が薄れ観光客相手の露店が増えた。
その観光名所の「朝市」地区の200棟ほどが焼失したとの報道に心が痛む。
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輪島の中心部から「河原川」を越えた輪島漁港周辺は、背後に山がせまり、海沿いに家々が密集して建っている。
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街に踏み入ると他地域の平地が少ない漁村同様、路地が迷路のようにつながる。
路地で見かけたおばちゃん達の乗り物は、荷台付きの三輪自転車。
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輪島市白米町にある棚田、「白米(しらよね)千枚田」。
平地が少ないがため日本海に面した急斜面を、荒波が打ち寄せる波打ち際まで切り開いた1000枚もの小さな棚田が幾何学模様に連なる。
まさに日本の原風景。
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重要文化財の「時國家住宅」。
築300年といわれる主屋は、茅葺入母屋造りで間口13間(約25m)、奥行きは8間(約16m)、面積は108坪(約356㎡)と広大な建物。
時國家の初代は、源平の合戦に敗れ1185年に能登に配流された平家の平大納言時忠で、2代目から当地で農耕を営み、時国村を成したとのこと。
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松の丸太で組まれた梁の数も、関西地方の民家に比べ雪国らしく荷重に耐えるように数多く使われている。
ケヤキの大黒柱は、1.5尺(約45cm)と太く、この地方らしい漆塗り。
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炎天下、海水を汲み上げ塩田へ散布し製法される「輪島塩」。
能登半島の製塩は、古墳時代の土器製塩がはじまりだそう。
江戸時代、加賀藩は財源確保のため、いち早く塩の専売制をとり入れ、能登の沿岸部農民に米を前貸しして、生産された塩で返納させていたとのこと。
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能登半島の北端の町「狼煙(のろし)」。
岬の眼下の建物は、「ランプの宿」。
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珠洲市(すずし)の「蛸島(たこじま)」という集落。
旧街道沿いには、「切妻・妻入り」の民家が連続して並び、屋根はこれまで見てきた能登の民家同様「黒の釉薬瓦葺」、壁はこれも同様に「下見板張り」で一部漆喰仕上げ、統一感のある街並みである。
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蛸島の街道沿いの民家は敷地が広く大型で、また蔵を有する家が多く見られ、街の豊かさが想像された。
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木造とりわけ伝統工法の建物に対してダメージが大きいといわれている「長周期地震動」の今回の大地震、被災者の皆さんの生命・救援がまずは第一だが、建築に関わる人間として、能登の風土を象徴する建物が一棟でも多く持ちこたえ、街並みも残り続けることを祈るばかりである。

珠洲の内浦に浮かぶ「見附(ミツケ)島」。
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by y-tukide | 2024-01-05 12:00